素敵な展覧会でした。
30年という短い生涯ゆえの短い活動期間に生み出された作品の多さにも驚かされましたが、短い期間に変化、進化して行く変遷がまた興味深く、東京ステーションギャラリーの赤いレンガ壁の空間に展示されていることで、作品の色彩感の素晴らしさが引き立てられているように感じました。
全体的に茶色や黒を基調とした土を感じるどちらかというと暗い色彩に、アクセントとして使われている赤や青や緑や黄色などの色彩が独特で美しく、憂いはあるけど暗い絵には感じない。下落合の風景もパリの風景も、佐伯祐三の心のフィルターを通して、共通の色彩感を持って私たちに訴えかけてきます。
音楽にとって、色彩とは、ハーモニーに当たります。同じメロディーでも、どんなハーモニーを付けるかによって、その曲の世界観はかなり変わって来ます。
どんなハーモニーを付けるのか?ということは、どんなコード進行にするのか?という選択です。そして、その中で、どんな音を使うか?という選択もあります。例えば、トライアドのコードばかりのコード進行と、7thコードを多用したコード進行では、かなり色彩感が変わってきます。そして、その中でも、コード・トーンだけでヴォイシングするのか、テンション・ノートも入れるのか、そのテンション・ノートはどんな種類を使うのかで、また色彩感は変わってきます。画家にとって、色彩感は、画家のスタイル、オリジナリティを決める重要なファクターだと思いますが、私たち音楽家とっても、とても重要で、自分の狙う世界観を表現するために悩み考えてアレンジをします。
その色彩感によって好き嫌いが分かれると思いますが、私は大好きになってしまいました。この空間にいつまでも居たい、ずっと見ていたい。そう思いました。
私もこんな色彩感の音楽を創りたい。誰か一人にでも、
そんな幸福感を感じてもらえるような、そんな音楽を創りたい。