ジャズの特徴の一つとして、コードの響きがあげられると思います。
ジャズのコードってなんだかちょっと不思議な複雑な響きだね。
あら、なかなか耳がいいですね。そうでしょう?ジャズのサウンドってちょっと複雑な響きの感じがしますよね。えっと、専門的に言うと不協和度が高いというのだけど。具体的に言うとコード・トーンだけでなくテンション・ノートと言う音が含まれているんです。今回はその辺を説明していきましょう。
片手でのコードの押さえ方〜右手だけで左手だけで〜
ここでは、以前 ジャズってどうなっているの?/ ジャズの標準的な構成を説明します で出てきたコードを使って説明していきます。
コード・トーンだけを使った押さえ方
Dm7ーG7ーCM7ーA7というコード進行(コードの流れ)を使って説明していきます。このコードの構成音は、下記のようになります。
コードの構成音の考え方がわからない方は以下のページをお読みくださいね。
では、ここで実際に鍵盤上でどのように弾くのか考えてみましょう。片手でコードを弾く場合の弾き方を考えてみます。
転回形サンプル1
ジャズでコードを弾く場合、このようにコード・トーンを使うだけでなく、複雑な響きを作るために他に音を付け加えてきます。その付け加える音の事をテンション・ノートと言います。
テンション・ノート(tension note)とは?
では、テンション・ノートとはどんな音でしょう?ジャズで聞こえてくるコードの響きがなんだか不思議な感じ、複雑な感じ、難しい感じに聞こえるのは、このテンション・ノートが加えられているからなんです。
コード・トーンとは、1度(ルート)、3度、5度、7度の音のことですが、テンション・ノートとは、さらにその上に、9度、11度、13度と3度ごとに重ねた音のことです。
テンション・ノートの種類は次のようになります。
このテンション・ノートの数え方には、とっても大切なポイントがありますから忘れないでくださいね!
それは、
テンション・ノートは、コードのルートから始まるメジャー・スケール上で数える!
ということです。これとっても重要なことです!
コードの種類が何であろうと数え方は同じ!です。
そもそもメジャー・スケールって何よ?とか、そんなの覚てないわ!と思われる方は以下のページをご覧くださいませ〜!
メジャー・スケールについての解説があります。
では、テンション・ノートの数え方を説明します
9度とか11度とか13度って、数えるの何だか面倒ですよね。でも実は、そんな沢山数える必要はありません。
9度は2番目、11度は4番目、13度は6番目の音が1オクターブ上がった音と思えばいいです。
(テンション・ノートは、9th=ナインス、11th=イレブンス、13th=サーティーンスと表記されたり、呼んだりすることが多いです。)
メジャー・スケール上で数えるとわざわざ言わなくても、普通に数えればいいんじゃないか?と思われるかもしれませんが、ルートがCだったらわかりやすいですが、ルートが他の音だと少々混乱する方も多いので気をつけてください。
例えば、Cルートのコードの#11thは、F#ですが、Bbルートのコードの#11thは、Eです。
#11thなのに実際の音の表記には#がつかない場合もあります。#は元の音より半音上がっていることを示す記号なので、元の音がEbだと半音上がることによってbがなくなります。で、Eになるということです。Bbメジャー・スケールの11thの音はEbですね。
このように考えると、Fルートのコードの#11thはB、また、Aルートのコードのb13thはFであるということがお分かりいただけるかなと思います。
テンション・ノートを入れたコードの押さえ方
では、先ほどのコード(転回形サンプル1)にテンション・ノートを使って弾きましょう。
Dm7には9th、G7には9thと13th、CM7には9th、A7にはb9thとb13thがそれぞれ使われています。
テンション・ノートを入れたら、そのすぐ下のコード・トーンは省略します。
ルートの代わりに9th、5thの代わりに13thが使われていると考えればいいです。先ほどのヴォイシングと比べてみてください。
(右手でメロディを弾いて左手でコードを弾く場合は、これより1オクターブ下のポジションが適しています。)
ルートがないと何のコードだかわからないじゃないか?と思われるかもしれませんが、ルートを演奏する役割は他のパートに任せればいいので、あえてピアノで弾かなくても大丈夫です。むしろそれよりも効果的な音を弾いた方が効率的です。
では、ベース・パートと合わせたサウンドを聞いてみましょう。
両手でのコードの押さえ方〜drop2〜
では、コードを両手を使って抑える時はどの様に押さえるのでしょうか?
これには色々な方法がありますので、今回はその中でも、最も音数少なくシンプルな効率的な押さえ方をご紹介します。
まず転回形を作る
まず、ちょうどいい音域に転回形を作ります。転回形を作る時は、なるべく近い音域に作ること、そのために一番上の音(リード・ノート=lead note)の流れがスムースに感じる様に作ることが大切なポイントです。そうすれば、弾きやすく聴感上も心地よいサウンドになります。
これで転回形が作れました。
Drop2 = 上から2番目の音を1オクターブ下げる
上手い具合に転回形が作れたら、上から2番目の音をそれぞれ1オクターブ下げます。(drop2)
これで音域が広がり、両手で弾ける様になりました。(相当大きい手の人でないと片手では弾けないと思います)
drop2した後の上から2番目の音を、可能だったらテンション・ノートに変えて行きます。さらにおしゃれなサウンドに!
上部の2声を右手、下部の2声を左手で弾きましょう。シンプルな押さえ方ながら、必要かつ充分な響きが聞こえてきます。
なんかかっこいい響きがするね
そうでしょう?!
音を一つか二つ変えただけでこんなに響きが変わるんです。
まとめ
ポイント1
- ジャズのコードの響きの特徴は、テンション・ノートを使っていることによって生じている。
- テンション・ノートは、コードのルートの音から始まるメジャー・スケール上で数え、種類は、b9th、9th、#9th、11th、#11th、b13th、13thの7種類あり、どんなコード・タイプでも同様に数える。
- 9thはメジャー・スケール上の2番目の音、11thは4番目の音、13thは6番目の音が、それぞれ1オクターブ上がった音と考えれば数えやすい。
ポイント2
- コードのヴォイシング(押さえ方)を考える時、まずコードの転回形を作ることが最初の1歩で、そこから様々な形に発展させていくことができる。
- 転回形を作る時、一番上の音(リード・ノート)の流れがスムースになる様にすると、全体の流れもスムースになる。
- 転回形を作ったら、コード・トーンを可能なテンション・ノートに変える。
- 9thはルート、11thは3度、13thは5度の代わりに使う。
いかがでしたか?
コードの押さえ方は、他にもたくさん、無数と言っていいほどありますが、今回はその中で最も基本的でシンプルな押さえ方をご紹介しました。
今回の押さえ方だけでも色々対応できて楽しめます。是非使ってみてください。
参考文献 : 音楽学校MESAR HAUS THEORY STEPⅠ STEP Ⅱ(BY MASAHIKO SATOH)