ジャズはマジックじゃない3のページで、ジャズで使われる譜面はとてもシンプルなものだと説明しました。
でも実際の演奏聴くと、すごく長いし難しいことやってるみたいだよ。
そうなんですよね。実際は譜面の長さの何倍もの長さになっているし、演奏している内容も複雑に聴こえますよね。
ジャズって、皆何を考えて演奏しているんでしょうか?仕組みを知らないと、何をやっているのかさっぱりわからないと感じてしまうと思います。でも構成は案外シンプルなものです。
ここでは、ジャズ演奏の標準的な構成(ジャズの演奏フォーム)を説明します。
ジャズ演奏の譜面と形式
どんな譜面を使うの?
ではまず、実際の曲の譜面を参考に見てみましょう。
ジャズ・プレイヤーが使用している譜面は、多くの場合、この様にとてもシンプルなものです。次の様なリード・シートと呼ばれる一段の譜面で、主にメロディとその上に書いてある記号(これをコード・ネームと言います)が記されている譜面です。
ジャズ・ミュージシャンって、こんな簡単な譜面を見ていることが多いんです。(もちろん、もっと難しい譜面もありますが)こんな譜面からどうやって演奏するんでしょうね?
ジャズ演奏の中身と標準的な構成
この曲の場合、譜面はたった16小節だけなのですが、これを元にして数分〜バンドのメンバーが多ければ10分以上の演奏が展開されます。
皆、何を考えて演奏しているんでしょうね?
まず、多くの場合、メロディも譜面に書かれている通りには演奏しません。ジャズ・ミュージシャンにとっては、書いてある通りに演奏するなんて、むしろそんなことは恥ずかしいことです。(譜面通りに演奏しなくてはいけない場合もありますが)元のメロディ通りではなく、自分なりに変化させて演奏します。
メロディを演奏する部分をテーマと言います。
でも、それだけじゃ1分もかからないですよね。
この後が、ジャズの最も楽しい部分になるのですが、メロディの上に書いてある記号(コード・ネーム)を元にして、自由にアドリブ・ソロ(即興演奏)をします。
例えば、ピアノ・トリオだったら、ピアニストがまず16小節を2〜3回繰り返して、その次にベーシストが同じ様に繰り返して、という様にそれぞれの楽器がメーンになって他の楽器の人はソロを演奏してる人の伴奏者になります。(けど、伴奏者も伴奏者なりに、ソリストに寄り添いながらも自己主張します。)(この辺のジャズのマインドについて言い出すとキリがないのでそういうことはまた徐々に・・・)
このソロの部分がジャズの一番楽しいところなんですけど、楽しくなるまでにはちょっと時間がかかります・・・最初は、「一体何をやったらいいのよ?」状態ですよね。そこを一緒に勉強していきましょう!
その後で最後に、もう一度曲を思い出すために、テーマを演奏します。
この、テーマ→アドリブ・ソロ→テーマ の部分がメーンとなる部分ですが、その前後に多くの場合イントロとエンディングが付きます。イントロとは前奏、エンディングとは後奏のことです。
この様に、イントロ→テーマ→アドリブ・ソロ→テーマ→エンディング
という流れがジャズの標準的な構成です。この様にして、16小節の譜面を元にして、何分かにわたる演奏が展開されるのです。
メロディ・フェイク
先ほど、ほとんどの場合譜面に書いてある通りに演奏することはないと申しましたが、それではどのように変えて演奏するんでしょうか?
メロディを変化させて演奏することをメロディ・フェイクと言います。
メロディ・フェイクには、大きく分けて2つの方法があります。
リズムに変化をつける
先ほどの譜面は、ほとんどの音のタイミングがON(強拍=拍の表)になっていますね。それだとノリが悪い(リズムに乗りにくい、リズムが止まっている感じ)ので、タイミングをOFF(弱拍=拍の裏)にずらすんです。そうすると、リズムに乗りやすく(躍動感が出て、リズムが前に進んでいく感じ)なります。
次の演奏を聴き比べてみてくださいね。
音源1
音源2
音源1の方は譜面通りに演奏し、音源2の方は、タイミングをずらして演奏しています。2の方がかっこいいでしょう?
こんな風に、音は変えないでタイミングをずらすだけで、聴いた印象はずいぶんと変わるものなんです。
音を変えたり付け加えたりする
文字通り、音を変えたり別の音を付け加えたりするのですが、あまり変えすぎると元々のメロディがわからなくなってしまったり、別の曲になってしまうこともあるので、作曲者へのリスペクトを持って変えることが大切だと思います。
そのようにしてメロディを活性化する方法はいくつかありますので、また詳しく別の機会に説明したいと思います。
アドリブ・ソロ
ここが、ジャズの真髄であり、ジャズ・ミュージシャンが生涯をかけて追求していくところだと思います。多くの場合、コード進行を元にして即興演奏をしていきます。即興演奏と言っても、多くの場合、本当に全くゼロからの即興演奏というわけではなく、練習して積み重ねて自分の中に貯めてきたものを即興的に組み合わせて紡いでいくということだと思っています。
だから、勉強して練習すれば誰でもできる様になる(ある程度までは・・・)ってことなんです。
イントロとエンディング
イントロ(IntroIntroductionの略)とは、曲の本編が始まる前にその曲に導くために演奏される導入部のことです。ない場合もありますが、複数で演奏する場合、あることの方が多いでしょう。元々アレンジされて譜面に書いてあることも多いですが、ジャズのセッションなどでは、コード楽器奏者であるピアニストやギタリストがその役割を担うことが多いです。最初のコードやメロディにつながるような4〜8小節のコード進行を使って演奏します。
エンディング(Ending)とは、曲の本編の最後、そのままいきなり終わってしまうのは味気ないので、そろそろ終わりですよ〜とお知らせしながら最後に盛り上げて、あるいは盛り下げて終わりに向かうための後奏の部分です。エンディング無しで、バシッと終わる場合もありますが、多くの場合ついています。こちらも元々アレンジされて譜面に書かれていることもありますが、ジャズのセッションなどでは、何も書いてなくても誰かがリードしてエンディングのコード進行に持っていき、周りがそれに合わせるというスタイルで演奏することが多いです。
で、こんな風になりました!サンプル演奏です
最初の譜面を元に演奏をした一例です。
イントロとしてドラムのフィル2小節+8小節、テーマが16小節、アドリブソロが16小節×2、後テーマ16小節、エンディングとして7小節、という構成になっています。
まとめ
- ジャズ演奏の元になっている譜面は、メロディとコード・ネームが書かれている一段のシンプルな譜面であることが多い。
- メロディを演奏する部分をテーマという。
- テーマを演奏した後、そのコード進行を使ってアドリブ・ソロする。
- その後、もう一度テーマを演奏する。
- テーマの前後に、イントロとエンディングが付けられることが多い。
- イントロ→テーマ→アドリブ・ソロ→テーマ→エンディングという流れが標準的な構成である。
いかがでしたか?譜面はとてもシンプルなものです。だから楽譜なんてほとんど読めなくてもジャズの演奏は楽しめます。
ふーん、今までどうなってるのかさっぱりわからなかったけど、なんとなく流れだけはわかって来たよ。
シンプルな譜面を元にどうやって演奏を展開していくのか、これからだんだんと説明していきますね!